文 献 综 述

1. 舘神龍彦(2007)『手帳進化論』PHP研究所

　この本は、古今の手帳を知り尽くした「手帳評論家」が、100冊以上におよぶ手帳を徹底分析し、その活用術を説明している。手帳の歴史から紐解いていき、さまざまな「有名人手帳」の使い方、そして自分に合った手帳の見つけ方までを解説している。
　舘神氏は、システム手帳は「手帳の概念を解体」（『手帳進化論』p.25）した点で意義があると述べている。つまり、企業からあてがわれた手帳をそのまま使うのではなく、自分自身で手帳を選び、「カスタマイズ」できるということを知らしめたのだというのである。

　さらには「手帳と他のツールを組み合わせる」ことで、自分だけの最強の一冊を作り上げる、いわば「手帳を進化させる」方法を紹介している。手帳にカバーやストラップを付けるなどのオリジナリティ溢れる手法や、今や情報管理に不可欠なデジタルとアナログとの融合法についても解説されている。

2.福島哲司(1991)『究極の手帳術』明日香出版社　

　1991年に「手帳術」という言葉を冠した書籍が初めて登場した。マーケッター/プランナーの福島哲司さんによる『究極の手帳術』がそれである。同書の冒頭では「情報化社会」、特に情報が「巨大なる怪物のようにふくれあがってきた」時代において、「情報とうまくやっていく」ことを通して時代を生き抜いていこうという問題意識が掲げられている（p.3）。具体的には「車内広告を見てアイデアを見つけメモをし、そのアイデアを昼食時間中に発展させ、そして、急ぎクライアントに電話をする」（p. 4）というような仕事の流れを「情報処理システム」と捉え、その処理の根本的な考え方を「情報生理学」として示すことが同書の内容だと述べられている（pp.4-5）。こうした情報処理にとっての重要ツールが、情報を書き留め、整理することに優れた手帳だというわけである。

ョンや生きがい、自分の生き方への気づきである」（p.24）、「夢を広げていくと、今日やることが気が乗らなくても、何だかやる気が出てきて、やれてしまう」（p.66）といった、人生や夢に関する言及が時折登場している。

3.舘神龍彦(2014)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』ディスカヴァー#12539;トゥエンティワン

　この本は、おもにビギナーに向けた手帳の選び方、使い方を説明する本である。近年の手帳をめぐる状況を鑑みつつ、各種の手帳とその使い方を紹介している。手帳をいろいろな要素に分解することで、「私にはこの手帳が合っている」「この用途に使いたい」という指針を見つけ、それをワークブック部分に書き込んで活用してもらうことを目的としている。

　ハードウェアとしての手帳の選び方だけではなく、サイズや綴じ方、記入欄のデザインなど、手帳を構成するさまざまな要素について、それぞれの特徴も解説している。そして、手帳の使い方各種を説明して、予定管理以外のいろいろな使い方を紹介している。さらに、仕事や生活の主体である「あなた自身」のメンテナンスとパワーアップの方法についても触れている。手帳をより働かせるために、人間の側の能力を高めるという、他の手帳関連書にはあまりない”倒錯的"な提案である。手帳をいくらうまく使っても、たとえばコミュニケーション能力が欠けていては、仕事に支障を来し、人生の可能性を狭めてしまうと考えられているからである。